ゆるくゆるく吹く風に身を委ねて、小さな体が左右に揺れている
それは、そよそよと揺れるコスモスの動きと全く一緒で
思わずぷっと笑ってしまった


【コスモス前線】


顔に沿い、体に沿い、髪の毛を揺らして通り過ぎていく秋風がとても気持ちよい
今日になって一斉に咲いたコスモスにうもれて、ノクスは小さく揺れながら、ずっと目を瞑っている
夏ほど暑くなくて冬ほど寒くなくて、コスモスが起き出したのも納得できるくらい心地よくて、思わずんー、とのびをした
体も心も軽くなって、このまま何処かへ飛んでいけちゃいそう
もういっそのこと、このまま飛んでいってしまおうか
そうしたらどうなるかな、みんなは心配するかな、いつまでも忘れないでいてくれるかな

無意識か、風の所為か、楽しんでいる所為か
小さく揺れるノクスの背に、言葉を1つ投げかけた。

「ねえ、そろそろ中に入らないの?」
「もーちょっとっ☆」
さっきからその返事何回目だと思ってるの、と知らぬうちに渋い顔になっていたらしい
そんな顔をさして、ノクスは爆笑する
「へんなおかおーw」

(そういうところはちゃんと見てるの、自分)

本気で頭を抱えそうになった
きっと今も凄い顔をしている
またノクスが爆笑する

ふわり ひらり    ゆれる  コスモス

少し長身で、淡い桃色をした一輪のコスモスを指さして、ノクスは歌うように言った

「このコスモスさん、いっちゃんににているね♪」
ただただ色が似ているからだろうか
奥深いところが理解しているからだろうか

よくわからないけれど。

「…あたしもちょうど、そう思ったとこ」
笑って、そう答えておいた















消えないで、まって まって
そのまま泡になって
いなくなってしまうの