「ろーぜくんっ!」

ローゼリッテの読んでいた本の後ろから、
ぴょこんと顔を出すようにして現れた無花果に、ローゼリッテはぱちぱちと目を瞬かせた。
無花果はどこかいたずらっぽい笑みを浮かべてローゼリッテの顔をのぞき込む。
無花果がこういう顔をしているときは、
大抵なにか妙ないたずらを考えているときだ、ローゼリッテは心中だけで冷や汗を流した。
どうしたの、と平静を装って首を傾げてみせると、
無花果はもう一度深く笑みを浮かべて
ひょこり、後ろ手に隠していたウサギのぬいぐるみをローゼリッテの前に見せつけるようにして差し出した。




うさぎさん




円らな瞳は青いガラス製、ふわふわの白い毛が酷く愛らしく、首元には赤いリボンがちょこんと結ばれている。
君の可愛さは犯罪だよ!と叫び出しそうになるほど、
ローゼリッテのツボに入ったぬいぐるみを目の前に、ローゼリッテは固まった。
瞳はかっちりとぬいぐるみに向けたまま固まった。
先ほどまで熱心に読んでいた本すら頭の中にないように見受けられる。
その様子に無花果は再びくすりと笑みを浮かべて、手にしたぬいぐるみをさっと頭上へ掲げてみせた。
瞬間ローゼリッテの赤い目がそれを追い、次は右へぬいぐるみを移動させるとまた追いかける。
餌をちらつかされた空腹の犬のようなその反応に、
思わず吹き出しそうになったのをこらえ、完全に釘付けとなったのを承知の上で、
無花果は楽しそうに笑みを浮かべてこてん、と可愛らしく首を傾げた。

「えへへー、かわいいでしょ?たまたまお店で見つけたんだぁ」
「…うん、かわいい、ね…。」
「…ロゼくん、いらない?」
「え…!」

問いかけにぱぁっとローゼリッテは顔を明るくする。
ぬいぐるみをローゼリッテの手に乗せて、可愛いの好きでしょ。と笑ってみせると、
今度は途端に顔を赤らめた。
ぶんぶん、と大袈裟に首をふると、短い銀髪が左右に揺れる。

「ちっ、ちがうよ!ただうさぎさんだから!!」
「わーかってるよう、可愛いうさぎさんだからでしょ?」
「う…!」

にっこり、笑ってみせると真っ赤な顔をしたままローゼリッテは言葉をつまらせる。
こういう反応をするから、ローゼリッテをからかうのは楽しくて仕方ない。
『可愛いのが好き』という性質を、恥ずかしいと思っているのかとことん隠したがるのだ。
手の中のぬいぐるみを見つめて言葉を探すローゼリッテを眺めながら、無花果はくすくすと笑った。

「…無花果」
「うん?」
「これ、ほんとにくれるの?」
「うん!ロゼくんが好きそうだなぁって買ってきたんだもん。」
「…ありがと、」

おそるおそる、顔を上げて首を傾げるローゼリッテに笑顔で頷いてみせると、
ローゼリッテははにかむように小さく笑ってぬいぐるみの頭を撫でた。
その姿に無花果もつられて笑う。

「ね、ね、名前、つけない?」
「あ…うん!どんなのがいいかなぁ…?」
「うーん、そうだねぇ…?」








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壱夜カナトさんが催されてた企画にスライディングして書いてもらいました!!
あの、偉大な、悉く萌えのツボを押してくださるカナトさんですよー!!!
へへへへーみなのもの、ロゼくんの可愛さに秒殺されるがいいっ><
そして無花果がきゃっきゃしててかわいいいいwww
あ、画像のことですか…?うちのとこの小説にもうさぎがあったのでつかいまわs…!ごめんなさ、orzorzorz
カナトさんもロゼくんも大好きですっ!ありがとーございましたっ!